鉄剤注射とは?中高生ランナーへの投与が問題となった理由

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注射するカエル

「ランナーの鉄剤注射が問題になったのはなぜか」
「鉄剤注射は治療のために行うもの」

この記事ではそんなことをつらつらと書いてみました。

中高生ランナーへの鉄剤注射がなぜ問題になったか?

2018年の末頃、社会的に大きく問題になった中高生ランナーへの鉄剤注射。「鉄剤」と聞くとものものしい感じがしますが、治療目的なら通常の行為。なぜ、大きな問題へと発展していったのでしょうか?

鉄剤注射とは何か。そしてなぜ中高生ランナーに鉄剤注射が行われてきたのかを見ていきましょう。

鉄剤注射とは?

鉄剤注射とは、文字通り体に鉄を取り入れるための注射のことで主に鉄欠乏性貧血の治療に用いられます。

鉄欠乏性貧血は赤血球を構成するヘモグロビンの不足によって起こるので、ヘモグロビンの合成に必要な鉄分を注射や錠剤によって補うことで症状の緩和に役立てるのです。

医師の診断があった上で治療のために行われる鉄剤注射はれっきとした医療行為です。問題となったのは、貧血の治療のためではなく長距離走のパフォーマンス向上のために鉄剤注射が行われていたこと。ヘモグロビンは酸素の運搬に関わるため、鉄剤注射が持久走における一時的なパフォーマンス向上のために用いられたのです。

会見カエル

鉄剤注射が治療以外で行われる背景

日本の中学、高校の部活動では科学的な根拠に基づかない厳しい練習が行われたり、不条理な規律が守られたりするケースが多くありました。「うさぎ跳び」や「夏でも水を飲まさない」スタンスは今では考えられませんが、当時はスタンダードでした。

最近は休養の重要性が広く理解されはじめ、体のケアを優先しながらトレーニングを進める指導者も増えていますが、昔ながらのスタイルを固持している学校もあるでしょう。そんな中で、勝つことが第一、パフォーマンスをアップさせるために何でもやるといった思想を持つ一部の指導者が行っていたのが治療目的以外の鉄剤注射のようですね。その中には知識不足により生徒への影響を把握しておらず、考えなしに行っていた人もいたことでしょう。

大会で成績を残すことによって、進学や就職に有利になる仕組みも勝利至上主義の傾向を助長していると言えます。

ただ、重ねて確認しておきたいのは、治療目的の鉄剤注射は全く非難されるものではないことです。思春期は急激に成長するため鉄分が不足しやすく貧血の好発時期にあたります。さらに長距離は汗と一緒に鉄分が排出されやすく、着地で赤血球が破壊されるなど、貧血のリスクが高いスポーツ。栄養面に気を付けていても貧血になる場合が多いのです。問題は本来は治療として行われるべきものが、副作用のリスクがあるにも関わらず競技力の向上のために行われたことでしょう。

鉄剤注射の副作用

鉄剤注射の副作用は主に2つあると言われています。

一つめは、長期的に鉄剤注射を行うことによって内臓に鉄が沈着することによって起こる副作用。肝硬変などのリスクが高まると言われます。二つめは、リンの減少による骨の質の低下。日本で使われている鉄剤注射には、リンを減少させる副作用があると言われているのです。

中高生は体も心も敏感です。薬剤によって受ける影響は大人の比ではないので、治療をする場合でも細心の注意が必要。パフォーマンスの向上を目的として安易に使用することに問題があるのは明らかですね。

勝利至上主義に潰されるランナーが多くいる現実

好きで始めた、やりたくて始めたスポーツによって体も心もボロボロになってしまうことほど悲しいことはありません。たとえ中学や高校で伸びなくても、好きでやり続ければ後々伸びてくる選手もいるし、趣味としてスポーツが人生の同伴者になる人もいるでしょう。

鉄剤注射の問題は氷山の一角。勝利至上主義によって心身にダメージを負う中高生のランナーがいなくなることを願います。

 

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