【読書録】「あと少し、もう少し」疾走感100%

あと少し、もう少し

「瀬尾まいこさん著『あと少し、もう少し』を読んで」

この記事ではそんなことをつらつらと書いてみました。
※ネタバレなし

「あと少し、もう少し」は中学駅伝に没頭する青春をみずみずしく描く

350ページを超える長編ながら、駆け抜ける登場人物よろしくページを繰る手がとまらない。就寝時間を厳密に守るタイプの僕ですが、先が気になって眠れなくなる本でした。

舞台は中学駅伝。全国大会を狙うような強豪ではなく、地区大会を突破して県大会出場を目指す地方の中学校駅伝部の日々を描きます。陸上部員だけで6区間の走者をそろえることができず、他の部活動から走れる生徒を連れてきて練習に励む。寄せ集めだからこそ、走ることを極めつつある陸上部と、走ることを新鮮な感性でとらえていく素人の生徒が混ざり合い、青春の微妙な機微をみずみずしく表現しているのが面白い。

主人公で部長の桝井を軸に、各区間を担当するランナーの心の動きやチームのあり方の変化が丁寧に描かれます。同じ場面を別の登場人物の視点から描く場面が何度も現れ、これが面白い。前の場面で読者が想像していた内面と全く違うものが描かれることもあれば、自分が15歳の時に戻ったかのように共感できる青春の揺らぎが見えることもあります。

僕は中学駅伝を経験しました。陸上部はなく、各部活の長距離向きの生徒が集められて参加していたので、作中の市野中学に近い環境です。中学3年時の地区大会では1区の後輩がライバル校から数秒差の2位で襷を渡してくれました。相手となるランナーは昔からの友達で実力が同等だと知っていたのでお互い意地になって並走。ラスト500mのスパートに反応できず置いていかれた瞬間の悔しさや、最後まで襷がつながり2位で県大会出場を決めた時の安堵感は、青き日々の大事な思い出として刻まれています。

閑話休題。

「あと少し、もう少し」や「風が強く吹いている」など、駅伝をテーマにした小説は多くあります。走ることを軸にすると、他のスポーツとは違い試合展開の変化は少ないため、登場人物の内面描写がメインになる。あと少し、もう少しの桝井や、風が強く吹いているの灰二のように俯瞰的にメンバーを見る主人公を軸に、一人一人の個性や心の動きが丁寧に描かれます。それぞれに共感しながら、自分に近い感性を持つキャラクターには特に思い入れが深くなるのも面白いですね。

読み終えてからも、セリフやキャラクターが強い印象を残す本でした。おすすめです!

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